現実のモデルを前にしてどう表現するか。実はまさにその瞬間には何も考えていない。

ただ、平たく太い6Bのスケッチ鉛筆（芯の幅が8ミリもある扁平な鉛筆）をそのままに使って始める。細い明確な線は引けないし説明的な描写は不可能だ。

手数は最小に、描写が過ぎたところは消す。紙に乗る鉛筆の黒は白い画用紙とのバランスで抑えられる。デッサンは生きたモデルからの抽象と捨象の繰り返しとなる。

ほんの僅かな鉛筆のタッチで、如何にすれば現実感、真実に達することができるか。

最後はモデルから離れ、自分の中に残った記憶によりデッサンを堅固なものとする。