捨象
現実のモデルを前にしてどう表現するか。実はまさにその瞬間には何も考えていない。 ただ、平たく太い6Bのスケッチ鉛筆(芯の幅が8ミリもある扁平な鉛筆)をそのままに使って始める。細い明確な線は引けないし説明的な描写は不可能だ。 手数は最小に、描写が過ぎたところは消す。紙に乗る鉛筆の黒は白い画用紙とのバランスで抑...
現実のモデルを前にしてどう表現するか。実はまさにその瞬間には何も考えていない。 ただ、平たく太い6Bのスケッチ鉛筆(芯の幅が8ミリもある扁平な鉛筆)をそのままに使って始める。細い明確な線は引けないし説明的な描写は不可能だ。 手数は最小に、描写が過ぎたところは消す。紙に乗る鉛筆の黒は白い画用紙とのバランスで抑...
万葉集や源氏物語のシリーズを描き始めた頃、ホームページのトップに山上憶良の歌を掲げました。 をのこやも 空しかるべき 万代に 語り継ぐべき 名は立てずして 冗談だよと自分に言い聞かせてみてもこんな風に載せる以上、全く否定的なことではなかったはずです。 しかし、人の存在と言うものに考えを巡らせば、時代の限界で...
新作を複写・印刷して少しばかり角度を変えてみたら、思ったより出来が悪く落ち込みました。 その気分を救おうと不覚にも真逆なことをしてしまいました。自分にとって理想的な絵画、ここ十年で最も好きなものを見てしまったのです。 アフリカ、クバ族のアップリケです。あまりにも超然としていて取り付く島もありません。突き放さ...
Youtube動画のコンテンツ作りで描画過程を見せるために人物デッサンをしていると、色々と制約があり描きたいようには描けないもどかしさがありました。 もう、Youtubeを使った広報活動に対する自分の能力の限界が解り、また制作過程を公開すると言うことが元々自分の考えと齟齬があったので、この際一旦そちらの方は...
好むと好まざるとにかかわらずデジタルやネットに囲まれた生活への細やかな抵抗と言うというか天邪鬼な性格からか、このところ言葉や写真を楽しむメディアとして雑誌に親しんでいます。 最初は昨年から始めた「ナショナルジオグラフィック」の定期購読で、質の高い写真を観ていたい気持ちからでした。また、言葉を味わう方では、こ...
初めて、日常的に目が行く場所、キッチンの真っ正面の居間の壁、すなわち家事の間中ずっと向かい合う所に、それも出来具合がとても気になる新しい絵を飾りました。 複写して画像になった作品はよく見ても、描いたばかりの絵そのものを持続的に見ることはありませんでした。自分の絵の見え方がどのように変わって行くのか、あるいは...
カメラは出来るだけ自分で制御できる機械的なものが好みです。しかし、写真の歴史(映像を自動的に得る)を考えれば写真はスマホで撮るのが当然の帰結です。さらに、動画という表現に疑問を持っているけれど、これからはもう写真より動画の時代でしょう。 絵画の広報手段のひとつとしてYoutubeを使って来ました。特に昨年暮...
時間の掛かる制作をしているので、以前は寸暇を惜しんで絵を描いていました。しかし、それで量は稼げたとしても、本当に良い絵が描けたのかと思ってしまいます。 何しろ大晦日も元旦も描いていましたから文字通り年中無休でした。むろん出張以外の旅行などもっての外です。 そんな私を気遣ってか昨年から友人が小旅行に誘ってくれ...
想像力を必要とする表現様式が大切だと思っていて、映画とか若い頃に好きだったテレビとかと少し距離を取りたい。あと今だったらネットの動画とかと。 友人や知人の大変な経験を聞くにしても想像力があれば、似た経験や何十分の一かの微かな経験を基に、それを膨らませある程度理解できると思います。根本的には別な私の想像世界の...
二十年ぶりくらいで交流を再開した友人がいて、彼は私と郷里も歳も美術を学んだ画塾も同じです。 しかし、私とは違い、彼はデザイン界で実業の道を歩み既に立派な実績を上げています。 考えてみると、私の周りには、美術教室や喫茶店等、継続が難しい分野でも長きに渡って成果を出し続けている友人達がいるのです。 そのような彼...